化学製品業界トレンド:2022年 日本

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2022/11/24

収益性への圧力は引き続き限定的

 

 

日本の化学製品企業 - 信用リスク評価

 

 

2022年第2四半期の日本の化学製品生産量はすべてのサブセク ターで減少しましたが、第3四半期には回復を見せました。短期 展望では成長率は限定的であるとはいえ、堅調かつ引き続きポジ ティブなものになりました。一般家庭の化学製品消費量は石けん および洗剤の繰延需要(2022年に3.7%増)もあって、引き続き 回復傾向にあります。同時に、世界的な半導体不足が解消される につれて、大口バイヤーのセクターである自動車業界の需要が上 向きました。

国外市場の顧客が化学製品売上のおよそ50%を占めますが、第3 四半期にその外需が再び拡大に転じました。しかし、先進国およ び中国の低成長は今後数か月間にわたって輸出の低下要因となり 得ます。

 

 

日本の化学製品生産量

 

 

この業界は原油およびガス調達でロシアに過度に依存していない ものの、エネルギー価格の高騰は引き続き懸念材料となります。 円安傾向は輸出量を押し上げますが、同時にエネルギーや一次産 品の輸入価格も押し上げられます。エネルギーや原材料の仕入れ 価格の上昇を最終的にすべて消費者に転嫁することには今後も問 題が残ります。そのため、2022会計年度(2022年4月1日~2023 年3月31日)は化学製品業界の利益率が縮小するものと当社では 考えています。ただし、2021会計年度は市況が有利に働き、大方 の企業で収益が上がっていました。

日本の化学製品メーカーでは支払期間は平均で30日~120日で、 過去2年間の支払決済状況は健全でした。この業界の支払遅延お よび倒産は過去2年間は低レベルで推移しているため、2023年も 大きく悪化することはないと当社では考えています。収益性への 圧力は軽微にとどまり、金融機関の貸し渋りもなく、大方の企業 は負債比率が高いわけではないため、日本の化学製品セクター の信用度リスクはすべてのセグメントにわたって「Good(良 い)」と当社では評価します。

長期的には、高い国内生産コストと、中国および米国との低価格 競争は、特に基礎化学品サブセクターでは生産能力のネガティブ 要因となる可能性が高いでしょう。このセグメントに属する企業 は、自動車産業のような大口バイヤー向けの低炭素化製品や特殊 製品のバリューチェーンを底上げする方向に向かうと当社では考 えています。