脱炭素化戦略が焦点化
米国の化学製品業界をみると、低成長、継続する高インフレ、高 金利で、国内の市場環境に難しい問題を抱えています原油価格の 高騰が、特に基礎化学品セグメントの利益率を圧迫しています。 しかし、多くの企業が仕入れコストの上昇を相殺するために販売 価格を引き上げました。ウクライナの戦争勃発を経て、米国の化 学肥料セグメントでは需要が拡大し、販売価格が上がって、利益 率も拡大しました。
米国の化学製品メーカーの業績は現時点では他の地域を上回って います。特に欧州の化学製品企業は、ロシアのウクライナ侵攻以 来のガス価格の記録的な高値に悪戦苦闘しています。それとは対 照的に、米国メーカーは国内の比較的安価なシェールガスを当て にできます。この競争優位性が2022年は7%増が見込まれる輸出 を支えており、貿易収支の黒字幅の拡大（2022年予測値は260億 米ドル）に貢献しています。
米国の化学製品セクターの支払期間は平均でおよそ80日です。 2021年および2022年は不払いや倒産の件数は低レベルで、2023 年も悪化しないものと当社では考えています。業界全体にわたる 企業合併買収の動きは負債額のレベルを押し上げましたが、その ほとんどは長期負債です。このセクターでは、事業資金調達を目 的として資本市場や金融機関の融資の利用度が高レベルです。
米国の化学製品業界の信用リスク状況は、利益率が十分確保さ れ、倒産件数も低レベルで、外部からの資金調達状況も問題ないため、「Fair（良好）」と当社では評価します。この業界にとっ て今後商機となり得るのは、新興市場（アジア太平洋、アフリ カ、中東）への輸出拡大と代替燃料の需要増です。化学製品企 業にとっての課題は、シナジー実現のために買収した企業との スムーズな統合と、新たな収入源を軌道に乗せるところにあり ます。
今後求められる重要タスクとしては、温室効果ガス排出量の削減 と厳格化する環境規制への適応が挙げられます。米国の化学製品 業界は2023年およびそれ以降、株主から高まる要求に対応する と同時に規制変更に適合することを目的として、脱炭素化戦略に 注力するものと見られます。同時に、排出量削減を後押しする政 府スキームが絶縁材や太陽光パネルなどに使用される化学製品の 需要を押し上げるでしょう。