化学製品業界トレンド:2022年 ドイツ

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2022/11/24

Still resilient, but profitability is under threat

 

 

ドイツの化学製品企業 - 信用リスク評価

 

 

ドイツの化学製品生産量は現在落ち込んでいますが、販売価格の 引上げで、売上高は微増の状態です。エネルギー価格と原材料価 格の高騰で、企業の10%が大幅に減産しましたが、40%は売上高 が伸びたと発表しています。メーカー向けのエネルギーおよび一 次産品の価格は35%~50%上昇した一方で、エンドカスタマーに 転嫁できたのはほんの部分的というケースがほとんどでした。 その結果として、化学製品企業のおよそ70%が減益を発表してい ます。

 

 

ドイツの化学製品生産量

 

 

こうした化学製品企業やさまざまなエネルギー集約型の業種には、 救済策として大規模に財政支援すべきです。ドイツ議会はこのほ ど、法人および一般家庭向けの2000億ユーロ相当のエネルギー救 済パッケージを可決しました。政府は来年度早期に電気料金とガ ス料金にプライスキャップ(上限価格制度)を導入することを計画 しています。しかし、高インフレ、高金利、低成長の傾向は根強 く、今後数か月間は化学製品需要に悪影響が及ぶでしょう。

ドイツの化学製品企業の自己資本、支払能力、流動性資産はおお むね強固で、現状では回復基調にあります。このセクター全体の 強い資本状況、許容範囲内にある負債構造、バランスの取れた負 債の満期構成によって外部から資金調達しやすくなります。しか し、高金利で必要な設備投資(生産施設、厳格化する環境規制対 応など)の資金調達コストが収益性の下押し材料となることは考 えられます。

化学製品業界における支払期間は平均で30日~60日ですが、過去 2年間の支払決済状況は非常に健全でした。現時点では2023年に 支払遅延や倒産が大幅に増加することはないと当社では考えてい ます。ただし、強力な財政支援策にもかかわらず、来年のガス価 格の高止まり傾向やガス不足(場合によっては、そのダブルパン チ)による下振れリスクは依然として残り、これが現実のものと なれば債務不履行率や倒産件数が上がるトリガーとなり得ます。

化学製品セクターの財務回復力と低い債務不履行率を根拠とし て、信用リスク状況を「Fair(良好)」と当社では評価します。 各種サブセクターのなかでは農薬セグメントのリスクが高めと考 えていますが、その根拠は原材料調達の大部分をこれまでロシア とウクライナに依存してきた事情により、その価格高騰がが増収 の抑制要因となり得るところにあります。石けんおよび洗剤セグ メントは原材料価格の高騰に非常に左右されるところに、高イン フレで一般家庭の消費量の落ち込みに直面しています。