化学製品業界トレンド:2022年 イタリア

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2022/11/24

他の業界よりも市場ショックから早期に回復

 

 

イタリアの化学製品企業 - 信用リスク評価

 

 

化学製品の生産量および売上は2021年に底堅い回復を見せたもの の、2022年上期に大きく減少しました。欧州の主要市場(フラン ス、ドイツ)の需要減で、成長の中心的な原動力となる輸出量が 急減しました。自動車や繊維産業の内需は引き続き堅調です。建 設業の売上も落ち込み、その影響は塗料および塗装剤セグメント に及びました。高インフレ圧力は、一般家庭の石けんや洗剤の消 費量を抑えています。

現在のエネルギーおよび原材料の価格高騰で、イタリアの化学製 品メーカーは国外のライバル企業から吹く向かい風に加えて、 主な末端市場の需要減にさらされています。さらに、イタリアの 化学製品メーカーが求める主要原材料バージンナフサのサプライ チェーン問題があります。一次産品価格やガス価格の高騰で、一 部の化学製品メーカーは操業停止やレイオフに追い込まれまし た。エネルギー価格の高騰から企業を守るための公的支援の範囲 と規模は依然として未知数です。

 

 

イタリアの化学製品生産量

 

 

利益率の悪化にもかかわらず、イタリアの化学製品メーカーの資 本状況は引き続き健全で、外部からの資金調達に過度に依存して いません。化学製品業界が他の業界よりも市場ショックに対する 耐性が高い理由がここにあります。

当社は高いエネルギーコストを根拠として、今後12か月間の 支払遅延事案は増えるものと考えています。最新の「アトラ ディウス支払決済バロメーター(Atradius Payment Practices Barometer)」によれば、売上債権回転日数(DSO)は平均で 100日を超え、今後数か月間でさらに悪化すると各企業では懸念 されています。倒産件数は非常に低いレベルにありましたが、今 期は増加するものと当社では考えています。もし深刻なガス不足 の長期化またはガス供給制限が現実のものとなると、特に中小の 化学製品メーカーや流通業者の倒産リスクが大きく拡大する可能 性があります。

現時点の主な問題点を考慮したうえで、財務回復力と低い債務不 履行率を根拠として、イタリアの化学製品セクターの信用リスク 状況を「Fair(良好)」と当社では評価します。基礎化学品およ び特殊製品セグメントは引き続き堅調ですが、農薬セグメントは 信用リスクが高めと判断しています。このサブセクターでは歴史 的に代金回収期間が長期であったうえに、調達先をロシアとウク ライナに依存していたため、原材料不足の影響をまともにかぶり ます。