化学製品業界トレンド:2022年 スペイン

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2022/11/24

流動性の圧迫に対する懸念が高まっている

 

 

スペインの化学製品企業 - 信用リスク評価

 

 

自動車や建設業など、大口バイヤーの業界の需要をみると、 2022年は今のところ安定して推移しています。しかし、継続する 高インフレと2023年の0.8%という低い予測経済成長率により、売 上は今後数か月間かなり悪化するでしょう。エネルギー(ガス) コストおよび一次産品コストの上昇を受けた2022年第2四半期の 減益を経て、化学製品メーカーは第3四半期以降、最終消費者に 転嫁するようになりました。この結果、利益率は不十分にせよ回 復を見せています。 スペイン政府はさらに、エネルギー価格高 騰の影響を受けた化学製品業界など、さまざまな業界に対して、 政府保証の貸付金制度やガス価格のプライスキャップ制で支援し ています。

スペインの化学製品企業はキャッシュフローとEBITDAの観点で は健全であるため、その効果は概して大きいとは言えません。 金融機関はおおむね、買収案件、重要投資案件(工場、設備な ど)、運転に必要な融資に対して積極的です。

 

 

スペインの化学製品生産量

 

 

最新の「アトラディウス支払決済バロメーター(Atradius Payment Practices Barometer)」によれば、スペインの化学製 品業界では支払期間は平均で67日である一方、売掛債権回転日数 (DSO)は平均で100日超となっています。各企業からは今後数か 月間でDSOの悪化とそれによる流動性への圧迫を懸念する声が上 がっています。支払遅延と倒産の件数は過去12か月間は低レベルでしたが、需要低迷と仕入れコストの高止まりで2023年は増加 するものと当社では考えています。ただし、このセクターの業績 が大きく悪化するとは見ていません。

現時点で、スペインの化学製品セクターの信用リスクレベルをす べてのセグメントにわたって「Fair(良好)」と当社では評価し ます。それでも、資金調達コストが上がり、支払決済状況が悪化 すると、各企業の財務への圧迫が強くなり、大口バイヤー業界 の需要は縮小するところであるため、下振れリスクは依然として 残っています。さらには、来年国外との競合が落ち着きを見せた 場合に、これがスペインの化学製品企業に有利に働く可能性があ ります。つまり、欧州中央部に位置するライバル企業がガス価格 高騰またはガス供給制限を理由に生産縮小を余儀なくされるケー スです。