国 / 言語
国を変更する
他の国や地域を選択すると、その地域に特化したコンテンツが表示されます。
言語を選択
image
出版物

新興アジア経済見通し

高齢化と世界貿 易環境の悪化へ の対応
17 Dec 2024

経済大国、成熟期 を迎える

複数の成長源

いくつかの要因により、新興アジアは世界の主要な成長エンジンとしての地位 を確立しました。過去40年間におけるこの地域の力強い発展の背後にある主な 要因は、大規模かつ増加している労働力、貿易の自由化と経済改革、技術の進 歩、そして健全な政策です。この地域は依然としてこれらのパワーの源から恩 恵を受けることに変わりはないものの、いくつかの亀裂が生じつつあります。

人口ボーナスの恩恵を受けているものの、それほど大きなものではない

過去には重要な役割を果たしてきたが、現在ではその力を失いつつある要因の 1つが労働力です。ほとんどの国にとって、人口の高齢化は大きな問題ではあり ませんが、中国とタイにとっては大きな問題です。中国にとって、新技術への 多額の投資にもかかわらず、それを補うために生産性の伸びを高めることは困 難です。その理由は、投資主導の経済成長からのリバランスと、欧米からの技 術的デカップリングが存在するためです。タイでは、生産性が比較的低く、家 計債務が高く、外国直接投資(FDI)流入が比較的少ないセクターでの雇用の 割合が大きいことが、生産性向上の障害となっています。

世界貿易の悪化とさまざまな影響

世界的な貿易環境の悪化を勘案すると、国際的なサプライチェーンにおけるこ の地域の強力な地位も、成長への寄与を低下させる可能性があります。しか し、これは現時点では中国にのみ当てはまります。貿易関係が維持されている 国々にとって、被害は限定的です。これらの国々の経済は、世界経済への悪影 響とそれに伴うサプライチェーンの混乱の影響を受けるものの、投資や貿易の 好ましい方向転換など、プラスの影響も受けるものと思われます。しかし、長 期的には、米国の新大統領が構想する貿易政策がアジアにさらに混乱を生じさ せる可能性があります。

金融緩和と堅調な輸出が成長を支える

ほとんどの経済にとって、短期的な成長見通しは良好です。輸出は2025年まで 引き続き堅調に伸びますが、そのペースは鈍化するものと思われます。ほとん どの国では金融緩和が成長を支えることでしょう。この状況は中国には当ては まりません。中国では不動産セクターの根深い問題と消費者信頼感の低下が、 消費者支出の弱体化につながっています。金融緩和と財政刺激策は短期的には 救済策となり得るが、中国経済のより広範な構造的問題に対処するにはあまり にも不十分です。一方、貿易戦争の影響で輸出の伸びは鈍化しています。イン ドとASEANの5大経済国は、変化する世界貿易環境において比較的有利な立場に あります。これらの国のほとんどは2024/2025年に安定した成長を示しており、 インドとフィリピンの成長率が最も高く、タイの成長率が最も低くなっていま す。アジア新興国は、高齢化と保護主義政策により多少その役割が損なわれる ものの、短期的にも中期的にも経済大国としての役割を維持することに成功す るものと思われます。

Related Documents
新興アジア経済見通し
5 MB PDF