金属・鉄鋼業界の動向 中国 - 2022年

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2022/09/05

ロックダウンと不動産セクターの不調が業界の重荷に

中国の金属・鉄鋼業 - 信用リスク評価

中国では、パンデミック(世界的な大流行)に伴うロックダウン(都市封鎖)の影響で金属や鉄鋼の需要が低迷しているほか、不動産セクターの問題が建設業界にも影響を及ぼしています。鉄鋼需要は、2021年の4.7%減に続き、2022年の0.7%減の947百万トンになる見込みです。中国国家統計局(NBS)によると、2022年1月から5月までの不動産投資は前年比で4%減少しています。金融引き締め策や不動産セクターの融資制限の緩和などの措置は、建設事業や金属・鉄鋼需要の減少傾向を緩和することはあっても、逆転させることはできないでしょう。

中国の金属と鉄鋼の生産量

自動車産業が複数回のロックダウンから回復し、自動車販売が政府の措置に支えられており、自動車用の金属・鉄鋼需要が再び増加し始めています。しかし、需要の急激な伸びは、現在の経済環境では不安定であり、建設事業の需要の減少による損失を補うことはできません。

鉄鋼セクターでは、対処の取り組みを続けているにもかかわらず、設備過剰(生産能力過剰)は問題として残っています。2016年以降、約700の小規模な製鉄所、1億4000万トンの鉄鋼生産能力が基準以下と判断され、停止しています。大企業の非効率な1億5000万トンの生産能力も停止状態です。しかし、鉄鋼の生産高は需要を上回り、増加を続けています。

コスト高騰と鉄鋼価格の下落の二重苦で、多くの企業の利益率が悪化しています。NBSによると、2022年上半期の金属業界の利益率は前年比で34%減少し、鉄鋼分野の利益は69%減少しています。政府は、製鉄所に対して設備やプロセスの低炭素化を強く求めており、これが流動性と利益率への圧力となっています。

中国の金属・鉄鋼業界の支払いは平均60日から120日で、過去2 年間の支払い行動は「やや悪い」という評価でした。需要が低迷 し、建設などの下流セクターからの支払遅延を考えると、支払い が長期化するケースは多いです。金属や鉄鋼セクターの企業はレ バレッジ率が高いものの、銀行は融資に消極的です。2022年に は、未払いや取引件数が2桁増加する可能性は否定できません。 これに加えて、設備過剰(生産能力過剰)、不均衡な製品構造、 利益率の低下、ギアリング率(負債比率)の上昇などの要因に基 づき、アトラディウスでは鉄鋼・金属業界の信用リスク状況を 「Bleak」(悪い)と評価しています。

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