アラブ首長国連邦：企業が戦略的与信管理を強化

はじめに

2022年版アトラディウス支払動向バロメーター（アラブ首長国連邦編）の調査結果を見ることは、企業は事業の運営で現在の厳しい経済状況や取引環境の破壊的な影響にどのように対処しているのかを、企業から直接知る貴重な機会です。

取り上げるトピック：企業間（B2B）顧客に対する支払条件、延滞したB2B請求書を現金化するまでの平均時間、支払遅延や不払が企業に与える影響、今後数か月間で予想される収益性への課題など。

調査アンケートは、2022年第2四半期にアラブ首長国連邦の企業によって記入されました。調査対象の企業からの回答は、2022年6月版のアジア向けアトラディウス支払い慣行バロメーターの一部であるアラブ首長国連邦のレポートに含まれています。

レポートの重要なポイント

不良債権が安定するにつれて、支払い条件への柔軟なアプローチ

• アラブ首長国連邦で調査された企業の間では、信用取引は依然として重要な要素で、企業間取引の売上の半分は売掛取引で行われています。私たちの調査によると、UAE市場の企業は、顧客のニーズに合わせて支払条件を設定するために柔軟なアプローチを採用しています。支払条件を設定するための主な基準は、ビジネスの慣習ですが、より多くのUAE企業は、顧客の信用の質に応じて条件を設定していると述べています。
• 改善されたビジネス状況を反映して、企業間取引請求書の遅延は昨年の60％から53％に減少が見られました。 もう一つの肯定的な発見は、鉄鋼/金属業界に財政的苦痛の兆候が見られたものの、過去1年間に回収不能として貸倒償却された不良債権が安定したことでした。アラブ首長国連邦市場の企業は、顧客の支払い不履行が発生した最大の理由は、顧客の流動性の問題であると語っています。管理上の問題 (Administrative issue)や顧客との紛争 (Dispute)も支払い不履行の要因として挙げられました。

企業が戦略的与信管理を強化する中の将来への楽観視

• 顧客有利な支払条件が原因で、売掛金回転日数（Day Sales Outstanding : DSO) の悪化は、アラブ首長国連邦全体の企業によって報告されました。 それに応じて、DSOの悪化の影響を緩和するために外部の債権回収機関の利用が増加しました。私たちの調査では、UAE企業の間で、ビジネスの収益性と実行可能性の重要な保護手段として、強力な戦略的与信管理の必要性に対する認識が高まっていることもわかりました。前回の調査よりも約15％多くのUAE企業がそう回答しています。
• 私たちの調査では、アラブ首長国連邦のすべての業界で一般的に楽観的なムードが見られました。彼らは、売掛取引の増加を期待しており、来年には支払い慣行の改善を期待していると述べました。また、DSOをしっかりコントロールすることも広く期待しています。アラブ首長国連邦の企業によって報告された主な懸念は、キャッシュフローを保護し、製品やサービスの需要の高まりに対応する能力を維持することでした。

アラブ首長国連邦における主な調査結果

• B2B売上の半分は、主にビジネスを成長させるために信用取引で行われました。
• 支払条件の設定における信用保険の役割についての認識が高まっています。
• 不良債権が安定する一方で、顧客の支払いのデフォルトは減少傾向です。
• 流動性の問題が顧客の支払いのデフォルトを引き起こす。
• 戦略的な信用リスク管理は緊急の優先事項です。
• 企業は楽観的な見方をし、売上拡大に注力しています。
• 経済が回復するにつれて高まる需要に対処することが今後の重要課題です。

詳細にご興味がある方へ

アラブ首長国連邦および以下の業界における支払い慣行の詳細については、以下レポートを是非ダウンロードしてご覧ください。

• 農業/食品
• 化学薬品
• 耐久消費財
• 電子機器/ICT
• 鉄鋼/金属