あなたの会社の売掛債権は事業の健全性を測るうえで重要な指標です。
未払いの請求書と不払リスクを分析することで企業の弱点を明確化し、ビジネスを守り、リスクを最小化する決断へと導きます。
コロナ禍以降、売掛債権を分析することはますます重要となってきました。倒産件数の増加やサプライチェーンの滞りなど、ネガティブな影響が世界中で発生しているためです。このような世界経済が不確実な時期においてはあなたの債権の状態を頻繁に見直すことをお勧めします。
以下は、この困難な状況においてもキャッシュフローを確実に守るために、どのようにリスクアセスメントを実施するかのタスクリストです。
1. 顧客をグループ化する
顧客をグループ化することでリスクプロフィールの作成やパターンの顕在化が図れます。例えば、とある顧客が支払習慣のあまりよろしくないグループに含まれるのであれば、それはより高い支払リスクを含有している表れかもしれません。あるいは、特定の地域や業種における兆候を見つけることができるかもしれません。
この作業を行うことで顧客がどのように分布しているかに気付くことができます。あなたの売上の大部分が少数の顧客に偏っている場合、その重要な収入源が失われたときにはより深刻な倒産リスクに晒されることになるかもしれません。逆に言えば、売掛金のごく一部でしかない顧客はたとえ支払いが出来なかったとしても、あなたにはさほど大きなインパクトを与えることはないでしょう。
査定グループ化には以下のような例を含みます:
- 国内顧客
- 海外顧客(国や地域ごとにより細分化することが可能です)
- 業種
- 商材
- 顧客の取引規模
- 顧客が占めるあなたの総売掛債権における割合
- 債務者の支払保証の有無
2.不良債権の発生を抑制する
どの顧客、あるいはどのエリアがキャッシュフローにおけるより大きなリスクを内包するのかを明確にするにあたり、あなたの取引がどのような対抗策や保証を使用しているかをリストにして確認するのが役に立ちます。それらは以下のような例を含みます:
あなたの補償状況や保証対策を分析することで損失総額の割合がどの程度になるのか、ポートフォリオのどの程度の割合が保護されているのかを明らかにすることができます。
3.請求書の未払履歴を確認する
破産においてどれぐらいの損失を被ったかを見返すことで、全般的なデフォルトリスクについてある程度の推論を立てることが可能です。パターンはありそうでしょうか??例えば、支払いの滞る債権は特定のセクターや地域に集中しているでしょうか?その顧客グループはより入念な補償やギャランティーが必要かどうか見定められますか?加えて、より注意深く取引をする必要のある地域を明らかにすることや過去の支払いがスムーズにいかなかった債権を分析することであなたの会社の債権管理のクオリティについても判断できます。あなたの会社のポリシーやプロセスを通じて改善の必要な地域を特定することは出来ますか?
- 過去五年間の不良債権の発生状況を把握しましょう
- 破産事例ごとに分類しましょう 例)セクターごと、取引量ごと、地域ごと
- 個々のセグメントにある潜在リスクを分析し、そのリスクを最小化できるプロセスを導入しましょう
また、あなたの業界の破産速報は常に把握しておくことが望ましいです。業界内の破産件数は増えているでしょうか?コロナ禍の影響を受けて、あなたの所属するセクターは打撃を受けやすくなりましたか?これを機に顧客の破産リスクに対して売掛債権を保全することを検討してみてもいいかもしれません。
4.DSO計算-売掛金回転日数
DSOとは請求書発行から実際に支払われるまでの平均日数を指します。これはあなたの債権管理効率を測るうえで有効な指標の一つです。
DSOを計算するにはまず売掛金の総額を掛売における総売上で割ります。その後、出てきた数字にさらに対象日数を乗算してください。様々なビジネスがそれぞれのDSOを定期的に計算しています。(月次、四半期あるいは年次)
DSO計算式 | DSO計算事例 |
DSO=(売掛金÷掛売総額)×支払日数 | DSO = (100,000 / 150,000) x 30 = 20 |
定期的なDSOチェックはあなたを以下のように助けます:
- ここ数か月、数年で比率はどう変化したか?
- あなたの業界平均に対して計算した比率はどうブレたか ― もしあなたの会社のDSOよりもだいぶ高かったり、逆に低かったりするとすれば、それは競合他社と比べてよりリスキーか、あるいはリスクが低い支払タームを提供しているのかもしれません。
- 顧客の中で提示した支払条件に合意し、実際に何社がその通りに支払いをしてきますか?また何社が支払いに間に合いませんか?
- あなたの取引は請求書の現金化にどれぐらい成功していますか?
もしかするとあなたの売掛債権における最大のリスクは顧客ではなくこの取引の債権回収方法にあるかもしれません。この部分を改善させることによって、より低いDSO値としてリスクを軽減できる可能性があります。
5.売掛金年齢表を完成させること
売掛金年齢表(エイジングレポート)とはあなたの売掛金を記録し、請求書一件に対してどれぐらいの支払期間がかかっているかを表にしたものです。売掛金年齢表は各顧客が支払いまでにどれぐらいかかっているかを明確にします。
このレポートは以下のように使えます:
- 顧客ごとの財務健全性を分析する
- 自分の取引の見直し―業界全体が停滞しているか否か
- 販売方法を調査する-あなたの営業部はより長い支払期間を設定していませんか?
6.あなたのキャッシュフローの将来的なリスクを明らかにしましょう
掛売先の信用度を査定するにあたっては、将来的な成長や計画を考慮するべきです。考慮すべき要素としては:
新製品/ターゲットグループ
別の顧客基盤に移行するにあたって、あるいは、新製品やサービスをローンチするにあたっては新たな支払いリスクが発生する可能性があります。これらは以下の方法を試してみることで軽減できるかもしれません。例えば、取引信用保険、ファクタリングやボンド取引、少なくとも新しいサービスや新規取引先が最低限安定するまでは有効な手段となります。
新しい地域
新しい土壌での市場開拓は様々なリスクをはらんでいます。例えば、馴染みのない商習慣や輸入における規則、関税や潜在的な政情不安など、それぞれの取引市場においてこれらを網羅したリスクアセスメントをもつことでリスクを顕在化し、リスクの最小化を促します。
新規顧客
新しい顧客との取引を始めるにあたり、徹底したデューディリジェンス(企業の価値リスク調査)に加えて信用状取引や取引信用保険の採用を検討することはリスクを最小限に抑えることにつながります。また、顧客ごとに売掛金にかかるリスクを分析したほうが望ましいです。たとえば、個別のお客様によっては危険度の高い地域に所在していたとしても、そのリスクは結果としては非常に小さいのかもしれません。もし地域のみを考慮しその取引を見送った場合、もしかすると貴重な取引機会を失うことになるかもしれません。
取引拡大
もし取引が拡大した場合、基本的な掛け売り方法に変化はないか、市場変化はないか、あるいは新製品が売り上げ増加に影響しているのかなど、その原因を一度調査をすることが賢明です。あなたの営業チームはデューディリジェンスパラメータをお持ちでしょうか?売り上げの増加は実はより高いリスク値を示してはいませんか?
7.売掛債権の支払タームへのインパクトを分析する
会社の要求に見合った支払条件が設定されているか、あるいは調整が必要なのかを厳しく査定してください。通常、あまりにも多くの個別条件を設けている場合、そのバリエーションの多さが支払遅延につながる可能性があります。支払条件の数を減らす方法を模索するか、取引先が支払条件を守る利点をアピールしましょう。 例)ボーナスやディスカウント、支払期間の延長などのインセンティブを活用する。
8.与信管理チームのスキルを強化
損失リスクは、熟練した与信マネージャーとスタッフによって軽減が可能です。経済的な重圧のかかるなか、まさに今現在のコロナ禍のような状況下においては売掛債権をモニタリングするチームを編成し、週次での点検作業と迅速な対応をチームに働きかけることで会社のキャッシュフローを適切に守ることができます。
まずは与信管理チームのスキル調査から始めましょう。その後、必要な人員は適切に拡充すると同時に、チーム全体の知識やモチベーションを支え、スキル格差を埋めるための訓練プログラムを実施しましょう。加えて、チームにはキャッシュフローに関わる以下の重要ファクターについて参加や喚起を促すようにしましょう。
- セミナーや会議
- 人的ネットワーク形成イベント
- Credit management organisation membership 与信管理組織に所属する
- 教材・参考文献資料
- インターネットフォーラムやオンラインセミナー
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