カントリー・レポート 韓国  2020

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2020/06/30

A recession in 2020 despite massive stimulus measures.

(JP) 2020 Country report South Korea - Performance forecast

政治情勢

再び訪れた朝鮮半島の緊張状態

韓国と北朝鮮の緊張状態は6月に再び高まり、北朝鮮による国境側の共同連絡事務所の解体で最高潮に達した。核開発計画に関する米国と北朝鮮の協議は行き詰っており、北朝鮮の核及びミサイル計画をめぐる対立が再び激化する可能性がある。その場合、または朝鮮半島での武力衝突へと事態が発展した場合、韓国の企業景況感や消費者信頼感、海外投資家に打撃が及ぶだろう。

経済情勢

景気後退が視野に

韓国は世界を主導するディスプレイおよび半導体メモリの製造国であり、造船でも世界第2位に付けている。輸出がGDPの約5割を占めている(主に半導体、他の電子製品、自動車、化学製品)。

2019年にはGDP成長率が2%に減速しており、この主因としては世界的な貿易の鈍化、米中そして日韓の貿易紛争、中国への輸出減少、半導体需要の減退と価格の低下がある(2019年に半導体輸出額は前年比で25%減少)。民間消費は伸び悩んだ一方、政府支出が拡大して経済成長を支えた。

2020年は、地域のサプライチェーンに混乱を招き、世界経済成長を抑制するコロナウィルスの感染拡大による影響から韓国経済は景気後退に直面する。中国からの部品輸送に遅れが生じたことが韓国の自動車、情報通信技術(ICT)部門の打撃となり、企業は低い稼働率で操業している。世界需要の悪化とサプライチェーンの混乱が続いていることが鉱工業生産と輸出の伸びを大きく阻害しており、2020年にそれぞれ1.5%と7.7%の縮小が見込まれる。

同時に、韓国国内で新型コロナウイルスパンデミックは国内消費に悪影響を及ぼしており、2020年は3%の景気後退が予想される一方、失業者数も増加している。韓国のGDPは2020年に0.7%程度縮小する見込みながら、マイナス成長の幅は新型コロナウイルス感染拡大の期間と規模による。

韓国政府は、2020年6月に今年3回目の補正予算案を発表し、これは288億米ドルに相当し、総刺激策は約2,200億米ドル(GDPの約14%に相当)に引き上げられた。この対策には、業績不振の企業、特に売上の悪化に見舞われた中小企業への追加融資、雇用の保護と世帯の支援のための追加支出、およびヘルスケアへの投資の増加が含れている。さらに、2020年3月と5月に中央銀行は経済をサポートするために金利を0.5%の過去最低水準に引き下げた。

一方、韓国では公的債務(2019年に対GDP比45%)、対外債務(2019年に対GDP比28%)がともに低位にあり、経常収支も一貫して黒字を計上していることから、政府は追加的な経済支援を行うことのできる柔軟性を持ち合わせている。

これらの財政・金融政策により新型コロナウイルスの感染拡大が経済に及ぼす影響はある程度緩和されるであろうが、世界的な規模の経済、金融市場の大幅な悪化が韓国に長期間にわたる景気後退をもたらす要因となりかねないのは確かだ。韓国経済は構造的に、中国経済の急激な縮小と米中貿易紛争の激化に脆弱である。また、国内要因としては巨額の家計債務(対GDP比95%程度)が引き続き問題となっている。低金利環境ではそうした家計債務も維持可能ながら、返済コストが上昇すれば個人消費が抑制されるおそれがある。

企業倒産件数は急増

内需停滞が信用リスク環境と、耐久消費財や小売業、サービス業、輸送部門の企業業績に深刻な影響を及ぼしているほか、住宅建設部門の業績が低迷を続けていることが(住宅価格抑制策が背景)、建設業企業と鉄鋼などの関連産業の打撃となっている。また、外需が一段と悪化すれば今度は輸出依存度の高い部門の企業の収益が圧迫されるだろう。現在のところ、企業支援するための包括的な財政的措置にもかかわらず2020年の企業倒産件数は急増する見通しだ。