カントリー・レポート 台湾  2020

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2020/04/15

マイナス面のリスクとして不況の可能性。

(JP) 2020 Country report Taiwan - Performance forecast

政治情勢

政府の社会・経済目標への強い信任 

蔡英文総統は2020年1月に行われた総統選で圧勝して再選を決め、所属政党である民主進歩党(DPP)も立法委員選で過半数議席を獲得した。これは、政府に対する強い信任を示す結果である。

台湾の中国との関係は今後も引き続き最も重要な政治問題となるだろう。中国政府は、対中強硬路線をとる現職政権との高官レベルの接触を減らし、二国関係ではより断固とした姿勢を示している。一方、台湾政府はこれまでのところ、中国政府の厳しい反応を誘発しかねない行動は控えている。

経済情勢

2020年はGDP成長率が低迷するも経済の基礎的条件は強固

台湾経済は主に輸出主導であり(電子機器、コンピューター機器、卑金属、プラスチックに注力)、財・サービスの輸出がGDPの70%超を占める。特に、電子機器・情報通信技術(ICT)輸出が輸出全体の約33%に達する。台湾はグローバル・サプライチェーンに高度に統合されており、台湾の輸出の40%程度、輸入の約20%を中国(香港を含む)が占めている。

2020年初頭には中国の複数の都市が封鎖されたことにより台湾との間の財とサービスの流れが阻害され、川下の生産に遅延が生じたほか、電子機器・ICTを始めとする部門の川上の原材料供給が不足した。国際的なサプライチェーンの混乱が持続していることや、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に世界需要が急激に縮小していることが打撃となり、台湾の輸出は2020年に6%超減少する見通しである。また、企業投資の低迷と生産鈍化は固定投資拡大の重石となっている。

台湾はこれまで新型コロナウイルスの感染拡大ペースを鈍化させることに成功しているが、個人消費の減速が(失業の増加も)内需に悪影響を及ぼしている。また、包括的な移動禁止令により、訪問観光客の流れは途絶えてしまっている。現在のところ、GDP成長率は2020年に約0.5%のマイナスになると予想されるが、世界的な景気後退と金融危機の規模、期間が拡大した場合にはそれ以上に深刻な景気後退となる可能性も排除できない。

台湾政府は景気支援の包括的措置を打ち出しており、4月初旬現在、経営難に陥った企業と個人へのサポートに向けて総額350億米ドル規模の2つの緊急景気刺激策を発表している。一方、財政は非常に健全であり、政府債務は対GDP比30%程度と低く、そのほとんどが自国通貨建てであるほか、国内投資家が保有している。よって、政府には必要な場合に追加支出を実施できる余地がある。また、中央銀行は3月に4年強ぶりの利下げを行い、政策金利を史上最低となる1.125%としたほか、中小企業の資金繰り支援を狙って66億米ドルを銀行に供給している。原油価格の下落と世界需要の後退を受けたデフレ圧力の高まりにより、景気見通しが悪化した場合には追加利下げを実施できる余地が中銀に生じている。

健全な財政と極めて安定した対外資金の状況(低水準にある対外債務、巨額の経常黒字、潤沢な外貨準備高)から、台湾はある程度の耐性を有している。だが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が長引くリスクのほか、中国への貿易依存度の高さから同国との政治的緊張の高まりが引き続き大きな下振れリスクである。同時に、対米貿易黒字が高水準にあることから、台湾は米政府による保護主義政策の影響も受けやすい。

企業倒産の増加が見込まれる

国内外の景気停滞を受け、信用リスク環境と電子機器・ICT部門、耐久消費財小売業、サービス業(ホスピタリティ、ケータリング、観光)部門の企業業績は悪化している。外需が一段と冷え込めば、電子機器・ICTを始めとする輸出依存度の高い部門の企業収益は圧迫されるおそれがある。