金属・鉄鋼業界の動向 フランス - 2022年

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2022/09/05

企業の倒産件数は微増にとどまる

フランスの金属・鉄鋼業 - 信用リスク評価

動向が激しく変化した2021年下半期と2022年第1四半期以降、金属と鉄鋼の需要は減速しています。自動車業界は需要減退と生産問題に悩まされており、建設事業は原材料価格の高騰とプロジェクトの遅延により停滞が続いています。とはいえ、航空機製造の需要は堅調で、主にアルミニウム生産者や卸売業者に恩恵をもたらしています。

 

フランスの金属と鉄鋼の生産量

 

2021年から2022年初頭にかけては、金属・鉄鋼系企業は、物資やエネルギーコストの高騰をバイヤーに転嫁することができました。供給が限られているため、受け入れざるを得なかったからです。そのため、特に金属・鉄鋼の取引業者は大幅に利益率を拡大することになりました。ロシアのウクライナ侵攻後、石油・ガス価格が高騰したため、フランス政府は企業や消費者向けのエネルギー費を抑制する対策(上限設定や補助金支給)を行っています。しかし、こうした支援策があるにも関わらず、需要の減少により、金属・鉄鋼企業の利益率は今後12か月間で悪化することが予想されます。販売価格は3月をピークに大きく下落したため、在庫管理が必要な取引業者には運転資金の負担が圧し掛かっています。

フランスの金属・鉄鋼業界における支払いは平均60日で、2021年と2022年の上半期は、パンデミック関連の政府支援策により、支払遅延や倒産件数は非常に少ないのが特徴です。企業倒産件数は、パンデミック以前の「通常レベル」に戻るため、今後数か月で約4%~6%増加すると予想しています。利益率が縮小して いる小規模の金属メーカーは、大規模な同業他社よりも値上げを 転嫁するのが難しく、最も影響を受ける可能性があります。ま た、需要の減少や新型コロナウイルス関連の公的融資の期限が修 了した後、運転資金の調達に問題が生じた企業では、債務不履行 リスクが高くなると思われます。

今後も課題は残されているものの、鉄鋼・金属業界は従来高いレジリエンスを備えており、政府による支援も継続されているため、債務不履行や経営破綻が大幅に増加する可能性は低いと思われ、当社の引受スタンスは全般的にニュートラル(中立)を維持します。鉄鋼および非鉄金属分野に対してはオープンとします。特に、後者の分野は航空機産業の回復の恩恵を受けています。従来から利益率が低く、競争が激しいなどの弱点が見られる鋳造サブセクターには、引き続き制限を加えます。

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