新型コロナウイルスの爪痕と政治的対立:岐路に立つアジアの貿易

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2021/10/11

米中間で続く貿易戦争とコロナパンデミックを受け、岐路に立つアジアの貿易

重要ポイント:

  • 新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大がアジアの経済復興を遅らせているものの、一時的なものであり、ほとんどはワクチン接種率が比較的低い国で見られる現象です。

  • 新型コロナウイルスの感染拡大後、最も高い経済成長率を示しているのが中国とベトナムです。インドの経済は、高い成長率を見せているものの、再び停滞する可能性が高いと見られています。タイとフィリピンの経済活動がパンデミック以前の水準に達するのは2022年以降と言われています。

  • 輸出の増加はほとんどの国で経済回復に貢献しており、ベトナムや中国は、世界的なコンピューターや電子機器市場の活況をうまく活かしています。

  • また、ベトナムは現在進行中の米中貿易戦争の恩恵を受け、直接投資(FDI)流入額が大幅に回復すると思われます。貿易戦争によって、米中経済に大きな分断が生まれることはありませんでした。

  • サプライチェーンの歪みによる直接的な影響は消失するものの、パンデミックは、成長と国際貿易に爪痕を残し、長期的な影響を与えると思われます。最も経済的な打撃を受けるのはインドとフィリピン、最も影響が少ないのはベトナムと台湾だと考えられます。この背景にあるのは、新型コロナウイルス感染拡大の封じ込めや財政支援のレベルの差異です。

  • 世界中で必要物資が不足し、コストが上昇するという混乱が生じたため、企業はサプライチェーンを再考し、再設計することになるでしょう。貿易戦争だけでなく、各国政府がハイテクや医薬品などの重要な分野での自立に重点を置いているのは、これが理由です。

  • 自由貿易協定は、こうした動向に対抗する役割を果たします。しかし、一般的な貿易政策と同様、これらの政策も地政学的野心の手段となりつつあり、経済協力の追求によるものではなくなっています。