ベトナム:B2B取引における貸倒償却 による事業流動性の悪化

支払動向バロメーター

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2022/06/28

ベトナムの企業の多くが、戦略的な与信管理の必要性が重要なテーマと回答

はじめに

アトラディウス支払動向バロメーターは、全世界の市場における企業間(B2B)の支払動向の調査で、毎年実施しています。

B2B顧客に対する信用販売関連の債務不履行リスクの管理について、特定の市場や地域の企業からの直接的なフィードバックも記載しています。取り上げるトピック:支払いターム、請求書の回収に要する時間、支払遅延の管理、支払遅延が企業に及ぼす影響、想定される事業の動向など。

この調査結果は、事業を展開する市場や地域について、説得力のある洞察を与えてくれると確信しています。

本書はベトナムに関するレポートです。 

ベトナム:レポートの重要なポイント

支払い不履行やDSOが不安視される中、信用販売が増加

  • ベトナム市場では、B2B顧客との信用取引が増加傾向にあり、既存の得意客・優良顧客とのリピート事業の奨励に重点が置かれています。これに関連する事由として、顧客に柔軟な支払いタームを設定できることを挙げた企業の数の増加があります。しかし、B2B信用取引額の約半分が期限を過ぎても未払いになっており、事業の流動性を圧迫する恐れを助長するものとなっています。さらに、回収不能として貸倒償却された債権額についても、企業から不安視する声が挙がっています。
  • 支払いタームの延長が一因となって、調査を実施した企業の約半数が「DSO(売掛債権回転日数)が悪化している」と回答しています。その結果、信用リスクの集中を避け、顧客の信用度チェックを厳格化するなど、与信管理プロセス強化の必要性が浮き彫りになりました。納品時に現金支払を要求している企業もあれば、早期決済を促すため、割引を適用している企業もあるようです。

見通しは明るいが、戦略的な信用管理に重点を置くことが重要

  • パンデミックの影響や世界的な経済不安によるサプライチェーンの混乱が懸念されるものの、ベトナムのビジネス状況は、全体的に前向きな見通しでした。今後数か月間でB2B顧客の支払状況が改善されるとの見方がほとんどであり、信用取引の増加を見込む企業が多いことも、ベトナム企業の事業に対する強い自信を表しています。
  • 調査全体から、戦略的な与信管理の必要性が重要なテーマとして浮かび上がりました。ベトナムでは、リソースに負担がかかっても自社で管理したいと言う企業もありましたが、自社の強みを守るために信用保険による補償を選択する企業も増えています。この戦略のメリットとしては、顧客の支払い不履行や不良債権から企業を守ることを目的としたリスク情報や定期的な市場情報に関する徹底したチェック、またDSOの改善や運転資金の解放などが挙げられます。,

ベトナム:調査結果の概要

  • B2B顧客との信用取引は増加傾向、顧客ロイヤリティに注目
  • 支払期限の延長により信用販売が増加し、企業は保険による補償を求める
  • B2B取引における貸倒償却による事業流動性の悪化
  • 流動性の問題や管理トラブルによる顧客の支払い不履行が主な原因
  • 戦略的な信用リスク管理に積極的に取り組む企業
  • 景況感は高水準、B2Bの信用取引は前向きな見通し
  • DSOの悪化と景気回復に伴う追加需要への対応に対する懸念